●掲載コンテンツ(全6画面)
1/6 ショップデザインの変遷(当記事)
2/6 ショップデザインの事業的位置づけ
3/6 ショップデザインの落とし穴
4/6 ショップデザインの方法論
5/6 21世紀のリテールベーカリーに求められるデザイン
6/6 21世紀のリテールベーカリーの一つの姿の提案(当記事)

特集の趣旨

現代のベーカリービジネスは一筋縄ではいきません。生活者の目は厳しく経済状況も油断を許さない状態が続いています。そんな中「店舗デザイン」などの「デザイン戦略」と考えられるヴィジュアルプレゼンテーションや空間のデザインのことを考え直してみようという企画がこの特集企画です。事業主の意識を空間デザインにも表し、ヴィジュアルな要素をコントロールする事は生活者に対するあなたの姿勢を表す一つの要素だからです。顧客たちは、あらゆるイメージを重ね合わせ、あなたのお店のイメージを脳に刻みつけます。それは商品そのもの、サービス態度、空間的心地よさなどです。決して「空間詐欺」は認めてもらえることはありませんが、イメージがあなたの商品と合えば強く印象づけられ、また次に足を運ぶきっかけになり得るのです。そんな「デザイン戦略」をその歴史的成長と、近未来の予測の時間軸の中で考えてみるとその本質が明らかになってきます。


最終回のポイント

今月は「ベーカリーショップデザインの変遷と21世紀ショップ像」というテーマで扱ってきたこの特集の最終回になります。最終回にあたり、ある一つの具体的状況を想定して、かなり具体的にショップの計画を起こしてみるという方法で、リテールベーカリーの一つの姿を提案するカタチを取っています。

その計画プロセスは紙面の都合上、かなり圧縮した状態で掲載していますが、今まで述べてきたプロセスをたどりながら計画していくことが必要です。「事業シナリオ」を計画しそれに沿った進め方をしていくことが成功の秘訣ですし、そのシナリオが存在すれば、実体が想いとずれていたときにも、冷静に対処していくことが出来るからです。

事業を成功させることは、あなたの「パン事業」への想いが真剣で、かつあなたの製造技量が確かなものであればそう難しい事ではないし、地域と共に延びていくことが出来るでしょう。


●一つのケースを設定し計画を作ってみます。

今回設定する状況はリテールベーカリーとしてはかなり一般的なケースを想定しました。それは、
一、ショップスケールは15〜18坪の平均的サイズ。
二、スタッフ数が三人程度で切り回せるショップの内容
三、オールスクラッチで製造する工房として計画。
四、21世紀型としての先進性と定着する確かな企画内容。
五、実現可能な、事業的に過剰投資とならない内容。


●ショップのあり方の照準

右図はかつて掲載したショップのあり方を分類したマッピングテーブルです。その中では右図のようにこだわり性を持った本格派のショップを想定しました


●ショップ対象客層の照準

次にショップが主要に対象とする客層の照準を表すマップでは右図のように右上の方を主体にした客層を「リーディングカストマー」と設定しました。「リーディングカストマー」といういい方は今回初めてしていますが、「他の客への影響力を持った先導的客層」という意味だと解釈してください。

これらの顧客は他の生活者への影響力が大きくこの層の顧客の評価は思ったより購買に影響を与えることが大きいのです。ただし、決して売上の多くをこの方々が占めるわけではなく、売上のボリュームゾーンは右図にも表現しているように左下の方にシフトしてきます。

店としては、右上のベクトルを示しながらちょっとずれた左下が売上の大半を占める層ということになりますが、これは最初からボリュームゾーン狙いの店舗戦略の場合と事業戦略は全く違うものになるのです。

多くのアルチザン達の悩みはこの設定のまちがいにあります。店の事業戦略も店舗デザインもボリュームゾーンに設定しながら「俺はこんなパン焼きたくない」といっているのです。「焼きたいパン」を焼きたかったら「リーディングカストマー」を説得するベクトルを戦略と店舗デザインと商品に出しながら、ボリュームゾーンの生活者を右上に引っ張ってくる事業戦略を組むしかないのです。


●右上に引っ張ってくる事業戦略

21世紀のリテールベーカリーが持つべきスタンスはこの項目に尽きるのです。それはスクラッチでパンを焼く事の意味と食文化を伝える伝道師となるための戦略といえば分かりやすいでしょうか。FC店のデザインの真似事や商品を参考にしてあなたのお店の「MODE」は形成されないということです。まずあなたの商品だという「CODE」を持ったパンを確立し、そしてその活動の結果、街の中にあなたのお店が「NODE」として取り込まれ、やがてその街があなたのパンが似合う「ORDER」を持ち始めるのです。
※(Code,Mode,Node,Order)についてはかつて述べています。(No.3)

では、具体的店舗の計画を描きました。参考になさってください。


想定条件
店舗面積:18坪・約60平米 スタッフ数:製造1名〜2名、販売1名、ホール兼カフェ1〜2名 販売促進戦略:オーナー
総設備投資:2000万(事業を始める事に対して必要なすべての備品含む)
------------内訳------------
製パンカフェ設備 800万 内装費 900万 備品  300万
--------------------------------------
運転資金100万 (材料費、宣伝費)

ベーカリーカフェの今までの設備投資の常識は3000万オーバーだったことを思えば極めて押さえられた予算といえます。
さらに中古機器などを使えば200万ほど落とすことも出来ます。(スタートにあたっては有効な方法です)

スタートに際して過剰な投資が最も禁物と考えられるのです。成長できるリアクションを感じたときにそれはいくらでも行えるのだから焦る必要はないのです。投資が大きいほど自らの事業戦略を蝕んでいくものはありません。売りたくもない色物パンを焼かなければならなくなるのは、その過剰投資が作り出すものだからです。

この計画は「リテールベーカリー」の近未来版として描かれています。「アルチザンブレッド」を焼く方のための「プレゼンテーション空間」それが「カフェ・スペース」です。「パンを焼くこと」だけに専念してきたあなたにはちょっとサービス業的業態はしんどいかも知れませんが「製造業」という概念からの脱却を目指すことが「リテールベーカリー」が活き活きと生きていける一つの方法だと私は考えています。

あなたのお店が繁栄することを祈っています。


ベーカリーカフェスタイルを持った一つの解答


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カフェエリア
カフェエリアを造る一つの意味は「あなたのパンの美味しい食べ方を啓蒙する」という意味が最大です。そして街のパン屋さんから、食文化の情報発信がされるようになるべきでしょう。そして経営的にもパンの販売だけに頼らず、飲食でそれなりの売上を上げることが出来ます。もともと最高のコンディションのパンがあるのですから、お洒落なサンドウィッチなどを出してそう手間をかけずに他のカフェなどよりも優位にビジネスを進められる要素を持っているのですから利用しない手はありません。前出の意味もこなせるし、一石二鳥ですが、カフェという社会的存在の意味についてもしっかりと認識していただく必要もあります。このくらいの席数でも全売上の20〜35%の売上配分になるくらいの上がりはあります。

まだ「パンを語る料理人」がいない現状からすると、あなたがパンを語らねば語ってくれる人は誰もいないのです。考えてもみてください「ライ麦パン」一つをとってもその美味しい食べ方を知っている生活者がどれくらいいるでしょう。食べ方の提案も含めて売っていくことから始めなければ納得のいくパンを焼く日はやってこないのです。

カフェメニュー対応エリア
コーヒーは充分美味しいコーヒーを抽出できるコーヒーマシンと豆の選定をしなければなりません。かつて「コーヒーの美味しい喫茶店」といわれていたコーヒー専門店の多くが美味しいカフェの出現で瀕死の状態になっています。

コーヒー、紅茶、カフェメニューと研究項目が増えてしまいますが美味しいパンとそれらの組み合わせが出来れば、逆に「最強のカフェ」にもなり得るのです。

工房エリア
オールスクラッチが前提の、パン・焼き菓子製造担当1人〜2人までのレイアウトとなっています。一般的常識からするとちょっと小さめの工房ですが、実際にはこれで充分やっていけます。販売量で言うと15万/日(パンのみ)くらいまでこの工房で十分です。

オープンデッキ
テント張りのオープンデッキが造られれば最高でしょう。スタイルとしてだけではなく、「オープンでお茶をする」ことは日本でも実は古くからある習慣だったのですが核家族化マンション化などによって生活環境では出来なくなってきましたし、そんな役目を街のブーランジェが担ってやってもいいのです。人が集まるところは情報の集まるところです。真冬を除いて3シーズンいけるでしょう。

パン販売エリア
お店の商活動としてはメインのエリアになります。完全な「対面販売」ではありませんが「対面販売系」を圧倒的におすすめします。上記の計画では「セルフピッキング」も可な「対面販売」のレイアウトと什器の計画です(平面図ではわかりませんが)。究極で言えば「客の今夜の料理を聞いて勧めるパンがある」ところが到達点でしょう。

パソコンブース
これからは必ずお店の中に欲しいコーナーです。あらゆる事業戦略的要素がこのコーナーを中心に考え出され実行され、メンテナンスされるようになっていきます。(詳しくは月刊ブランスリー既刊の特集「僕たちのIT革命」)をご覧ください。

顧客管理のDB(データベース)などもここで管理することになります。またインターネットには必ず「常時接続」でHPの管理も出てきます。

なおこのプランをコピーして使われることは個人経営の方に限ってはやぶさかではありませんが、地域によっては多少いじらないと保健所の認可が出ないところもあります。計画時には地元管轄保健所/食品衛生指導課等の指導を受けて下さい。

大屋和彦


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