●パン屋・Boulangerie業態についての考察

今「パン屋」と「Boulangerie」は何処にいてどう走っていくべきなのか?

例えばこんな話から入ればわかるでしょうか?物事には流れがあって今が生じています。昭和の50年台(君たちがまだ赤ん坊かもしれない。いやまだ生まれていないかも知れないかも知れません)ファミリーレストランというのがありました。いや、今でもあるのですがこの時代に全盛期を迎えていました。今君たちが頭に描く「ファミレス」とは存在価値が違っていたのです。家族や友達とちょっとだけ非日常の雰囲気を持って食事をしに行く場所だったりしました。そこでは「セントラル厨房システム」が導入され時代の先端を走っていました。

ファミレス同士の熾烈な戦いが繰り広げられていました。その○×システムってなんだろう?なんだか凄いシステムらしいという感じでした。確かにそのシステムを考え実行することは当時としてみれば大変なことだったでしょう。すでにあるシステムの批評をするのは簡単なことですが、実際に時代初で作っていくことの大変さはやってみなければ解りません。ただし、なんだ知ってしまえば「食材加工工場」じゃんかと思うかも知れない。そこで加工冷凍して各店舗に配送して各店舗のシェフ(?)が暖めて盛りつけをするという具合です。何処の店に行っても同じ味が楽しめます。ファストフードなのね。そしてやがて人は離れていきました。だって早い話冷凍ハンバーグ屋さんでしょ。という人もいたりします。多数の店舗を展開した後では提供内容のレベルを上げての展開は、サービスのレベルアップも含めて不可能に近いことです。

つまり、時代の環境が変わってしまったのです。あんなに喜んで行っていたのにだんだん普通のことになってしまうんです。ってそこまでじゃないにしろ、事実存在の位置の変化にレストラン側も気づき、戦略を変更し、今では当時の客層ではなくマクドナルド卒業組や深夜族、昼食サラリーマン、主婦の茶話会と位置づけを変えてきたのです。

「街のパン屋」はどんどん消えて行っています。パパママショップのパン屋さんは消えて行っているのです。やはり時代の環境が変わってきたからなのです。止まってしまったら周りに追い越されていく。その程度のレベルであったらコンビニパンでいいからです。コンビニでも「焼きたてパン」(というか焼きたてじゃないと食べられないパン)を出すところもあります。なにせコンビニには別会社だけどパンの商品研究をしながら新商品をがんがん提案する部署もあるのです。提携先パン工場からは数時間ごとに配送便が走ります。一日一回しか焼かない街のパン屋さんより夕方のパンはコンビニパンの方が新鮮ということになります。もっと粉の質を落としてコンビニと金額で勝負する事にしますか?もっともっと組織は知恵を出して進んでいきますよ。

一方ワインが定着しました。かなりのワイン消費量です。20年前に比べたら雲泥の差でしょう。ワインが食卓にある場合、その時の主食は「コメ=ご飯」ではなくやはり「パン」ということになります。そんな時のパンは食パンでもないでしょう。かといってスーパーに袋入りで置いてあるパスコのバゲットでもないでしょう。その存在位置に気がついたというか、何となく考えていなかったけど、ちょうどはまったのが「アルティザンブレッド」だったのです。存在の場所は与えられましたがまだ出番は少ない。そうアルティザンブレッド系の「パンの時代」はやってきたかに見えますが、まだ「パン職人の時代」ではない。その存在の確かな重みに気づいている人は少ないからです。

しかし「パン屋」の生き残る道は実はあるのです。「Boulangerie」が育つ道も実はあるのです。

それはまさに「業態」という言葉に集約されています。「業のあり方、さま」を明確にコントロールしていくことにあるのです。日本の「パン」は世界に例を見ない状態で独特の独自文化を築き上げてきました。「あんパン」「クリームパン」「メロンパン」「総菜パン」を代表する日本のパンたち。ニーズがあって広がり今でも多くの人に愛されています。決してその役目は終わったわけでもなくまだ続いて行くでしょう。悲しいことにそのことそのものは一方でアルティザンブレッド系が普及するための「足かせ」にもなっています。一方コンビニパンという世界も実は発生していました。まあ、「なんちゃってパン」の世界だけれど。これもまた一種独特の若年層にうける世界なのです。そしてそのニーズは否定することは出来ないし実在しています。

それらの状況を確認しながら進んで行けば日本のスクラッチの「パン屋」の進むべき世界はわかるでしょう。徹底した「レベルの高い菓子パン屋」あるいは徹底した「レベルの高い総菜パン屋」しかないのです。しかしながら鵜呑みにしてそのままそういうコレクションに走っても失敗します。そのためのシナリオと戦略が必要なのです。そして「Boulangerie」の進む道は徹底した「レベルの高い、日本における新たなジャンルとしてのネオ伝統主義の食事パン屋」なのです。しかしこれにも同じようにシナリオと戦略が必要なのです。

リテールのベーカリーについて「自然成長的な明るい話題」は現在のところ考えられないというのが自然な状態として底流を流れています。世の中の経済も自然成長する要素は極めて考えにくい。というか考えられないですね。現状の経済力をいつまでどうやって繋いでいけるだろうというようなイメージしか考えようがないのが実状です。だとすれば「リテールベーカリー」という世界はどんな成長の方法があるというのでしょう。スクラッチのパンの世界の技術力やそれ自体が持っている深い世界について、僕は何の疑いも持たないどころかその世界でしか出来ない素晴らしい世界を知っています。例えばフランスではスクラッチで作った職人の手によるパンだけが「Pain」と呼ばれる。それ以外の例えば冷凍生地のパンなどは「食材」とか「製品」というような呼ばれ方をするもので「Pain」とは呼べないことになっています。それくらい職人の技能に敬意を表す文化背景を持っているし、人々がそれを認知しています。まさにそういう方向へ世の中を動かしていくことしかスクラッチの職人世界の美味しいパンの事を解ってもらう方法はないのです。

その戦略について構造的に立ち向かっていく方法は基本的には「事実美味しいスクラッチのパンを供給していくこと」と、自分たちの手によって伝えられる「インターネット」の活用しか方法はないのだと私は確信しています。なぜなら雑誌もテレビも番組制作を担当する制作会社であれ、記事や特集を考える構成作家もライターも実際にはパンの専門家などはおらず、文化背景も持たず、適当にその人の中にある「パン」のイメージでしか特集の趣旨も企画も考えられないからです。ある程度解っている人ならば、雑誌の特集などを見たときに「なんでこういう編集するのかなあ」と思うでしょう。これからは、志あるブーランジェリーが自分自身の手でパンの世界を変えていくドキュメントを創造していくしか方法はないし、それが真実書けるのもブーランジェ自身でしかないし、それが出来るツール(インターネット)は手の中にある時代になったのです。

その戦略について「戦略会議」で語っていきましょう。


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